剪定は植物と暮らすうえで欠かせないお手入れの一つです。様々な場面で目的があって行われます。

剪定には、剪定鋏や手で行う方法があり、適切な剪定道具を使用することが重要です。間違った方法で行うと植物が元気がなくなる、枯れてしまうことがあるからです。本末転倒にならないように剪定をしていかなければいけません。

剪定とは

剪定は植物の成長や形状を整えるために行われます。正しい剪定をすることで、植物の成長を促進し、綺麗で健康的な植物を育てることができます。この結果、病気や害虫の発生を防止することがきます。

剪定は、高木、低木、果樹、草花など、植物の種類によって異なる方法で行われます。各種類の植物に最適な剪定方法を知ることが重要です。剪定の時期、成長段階に応じて、剪定方法が変わります。剪定する前に、植物の種類と剪定時期について調べることをお勧めします。

また、剪定する際の注意点について理解することが重要です。怪我や事故が起こりやすく最近では熱中症などの原因にもなっています。

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日本の剪定の歴史

日本での剪定の歴史は古く、数百年かけ剪定の技術が継承されています。

平安時代

平安時代には、貴族たちが自宅の庭園で樹木を剪定する風習があり、樹木を整えるだけでなく、風情や季節感を表現するためにも行われていました。

また、平安時代末期には、貴族たちが狩猟の際に刈り込んだ枝を庭園に活けて楽しむ「枝飾り」の風習が生まれました。今でいう生け花やリースのようなものに近いです。

鎌倉時代

鎌倉時代に入ると、お寺などで剪定が行われるようになりました。禅宗では、庭園や樹木を通じて自然との調和を求める考え方があり、庭園剪定は禅修行にも繋がるものとされました。

室町時代

室町時代には、日本庭園の基本形式が確立されました。また、茶の湯文化も盛んになり、茶室の庭園にも剪定が取り入れられるようになったと言われています。

日本庭園の形式は以下の代表的ものがあります。

  1. 回遊式庭園
  2. 池泉式庭園
  3. 枯山水式庭園

江戸時代

江戸時代に入ると、公家以外の庶民にも庭園が普及し、剪定技術が広まっていきました。文化的なイベントにおいても、剪定技術は欠かせないものとなっていました。

明治時代

明治時代には、西洋の園芸文化、植物学が日本に伝えられ剪定の技術がさらに進化しました。

都市化が進み、公園や庭園の需要が増加しました。このため、都市公園や企業の庭園など、多くの新しい庭園が作られ、それに伴い剪定技術も進化していきました。

大正時代

大正時代に入ると、新しい植物の種が日本に輸入され、それに合わせた剪定技術の進化しました。また、庭園文化が広がり、剪定の美学や技術が注目され、剪定家や剪定教室が登場するようになりました。

昭和時代

昭和時代は、産業が発展し、多くの庭園や公園が整備されました。また、庭園が一般家庭でも楽しめるようになり、剪定が広く一般化しました。昭和時代には、剪定に関する本が多数出版され、剪定の知識や技術が普及しました。

現代

現代では、日本の伝統的な技術と西洋の技術が融合した多様な剪定スタイルが存在します。また、環境問題や自然保護の目的とした、生態系に配慮した剪定技術の研究が進められています。

剪定の目的

剪定は場所によって目的が異なります。

  • 個人宅
  • 果樹園
  • 街路樹
  • 公園
  • 庭園
  • 屋内
  • 公共施設
  • 産業用施設
  • 森林

場所に合わせて、その対象となる植物に合わせて剪定する必要があります。

個人宅

個人宅は住んでいる方や、剪定をしたいと思う人の目的別で行われます。主に以下の5つで行われます。

  • 庭木の大きさの維持:大きさの維持や形を整えて美観を良くします
  • 安全面:枝が道路に伸びていて通行人の安全の確保や倒木対策
  • 花や観覧:思い出の花や好きなお花、好みの色に囲まれることができます
  • 実の収穫:庭木で実を収穫し、ご自宅に並ぶと感慨深いものがあります
  • 庭木の健康:供に年を重ねてきた庭木を健康にすることができます
  • 苦情対策:周り近所にご迷惑にならないようにできます

現状によって本当に様々な剪定理由があると思います。個人宅の庭木を主に行っている植木屋なので大抵のお悩みは解決できるよう心掛けています。この記事では剪定という大きい枠でお話していますので庭木のお手入れについて知りたい方は下記のボタンよりご覧ください。

果樹園

果樹園では品質と収穫の増加のために剪定が行われます。

  • 樹木の形成
  • 果実の大きさ
  • 果実の色合いの改善
  • 果実の糖度調整
  • 病気や害虫の防止

街路樹

街路樹は歩行者や車などが干渉しないようにしていかなければいけません。

  • 安全確保
  • 健康維持
  • 病害虫の抑制
  • 環境保全

公園

公園では老若男女、様々な人が利用するため、安全かつ人が和やかになる憩いの場である必要があります。

  • 環境整備
  • 花壇整備
  • 安全確保

庭園

庭園は庭園全体で一つの景観としてみるので樹木の剪定のバランスがとても重要になります。どこから見られどう育つのかを考え剪定する必要があるため、剪定する方全員で同じ景観を目指して作業を行います。

  • 庭園全体の美観維持
  • 樹木の健康維持
  • 安全管理
  • 四季の環境造り
  • 空間の調和

屋内

屋内で育てられる植物にも剪定が必要です。照明や温度、湿度などの環境が屋外と違うため、植物の成長や発育に影響を与えることがあります。剪定を行うことで、植物が健康に成長し、また定期的なお手入れを行うことで異変にいち早く気付けるようになります。

  • 景観維持
  • 植物の健康維持

公共施設

  • 安全確保
  • 美観維持

マンション・アパート

  • 安全確保
  • 日当たり
  • 防犯対策
  • 景観維持
  • 建物が傷まないように

森林

  • 自然災害の対処
  • 林業の材料
  • 森林の質の向上

以上のような目的がありますが、発注者によって目的は様々です。何を優先していくかで剪定のやり方が変わってしまうので、目的を明確にすることが植物を健康的に生かし、共存していくことができます。

剪定の基本的な方法

目的や場所に沿って記述してきましたが基本的な剪定方法があります。

不要枝忌み枝

まずは樹木の剪定であれば不要枝を覚えましょう。これは樹木の景観や健康を大事にするのであれば不必要といわれている枝(不要枝)で基本的に切っていい枝です。

不要枝・忌み枝にはいくつか種類があるので説明します。

ひこばえ(やご):樹木の根元から生えてくる枝。樹形の見栄えが悪くなるとともに、胴ふき枝同様、樹木の上部分に栄養がいかなくなってしまう。また、躓きやすくなる。

胴ぶき枝(どうぶきえだ):幹吹きともいい、幹の根元付近から上に伸びた枝。樹木の上部分に栄養がいかなくなってしまうため、早めの選定が必要です。

徒長枝(とちょうし):枝から真上に伸びすぎてしまった枝。雨風などで折れやすいことと、害虫の温床になりやすい。

逆さ枝(さかさえだ):幹に向いて生えてしまっているもの。

ふところ枝:幹付近から伸びた枝。日が当たりにくく、空気もこもりがちなため、害虫の温床になりやすい。

並行枝(へいこうえだ):複数の枝が平行に伸びてしまっている枝。そのまあにしておくと下の方の枝の日当たりが悪くなってしまう。

車枝(くるまえだ):枝の一部分から多数の枝が出ているもので、車輪状に枝が伸びているもの:

からみ枝:その名のとおり、枝同士が絡み合ってしまっているもの。

不要枝以外の切る場所を決める

不要枝を切り終えた後は目的に合わせ、植物に合わせて切る場所を決めていきます。

切り口の方向を決める

切り口がどちらを向くかで、新芽の出方や剪定後の形状が変わってきます。目的に応じて、切る方向を決めます。

  • 斜め上方向への切り口:新しい枝がより垂直に成長するようになります。
  • 斜め下方向への切り口:新しい枝がより水平に成長するようになります。
  • 枝と垂直に切ると枝の伸びている方向に新しい枝が成長します。

枝を切る

切る場所や方向を決めたら、剪定道具を使って枝を切ります。切るときは、まっすぐできれいな切り口になるようにしましょう。

切り口の処理

切り口から病気や虫が入らないように、適切な方法で切り口を処理します。

基本的に癒合材などを使い切り口に塗っていきます。植物によっては、特別な処理が必要な場合もあります。

剪定後の成長期の確認

剪定後、時間が経過すると新しい芽が出て枝が伸びてきます。伸びてきた枝を時期を見て再度剪定していくというのを続けると樹木が健康で落ち着きます。

また、剪定後の枝や葉を綺麗に掃除ことも重要です。これが大変です。剪定した部分を残しておくと、病気の原因となることがあります。そのため、剪定後は適切な処理を行い、植物を健康的に保ちましょう。

草花

草花を剪定するのであれば枯れている箇所は根元から切りとるのが基本です。

剪定時期

剪定時期とは、木や植物の生育状況や目的に合わせて、適切な時期に剪定作業を行うことを指します。剪定時期は、木の種類や地域、気候条件によって異なりますが、一般的には春夏秋冬で分類されます。

また、剪定の適切な時期は、一般的に植物の休眠期や花後などに行うことが多いです。日本には四季があるため、その季節によって剪定の方法が変わります。

春剪定

春時期の剪定最近では暖かくなるのが早くなっているので春の剪定を行うときは新芽が動き出してから切ることが多いのですが、春の剪定は樹木がまだ休眠しているうちに行うのが基本で、樹木に負担をかけずに剪定ができます。また、剪定後に枝が成長し始めるため、切り口から病気の侵入を防ぐこともできます。

春の剪定では、先端を切ることで側枝を伸ばすことを促進する方法などが行われます。果樹園では、花芽の形成が行われる前に剪定を行うことで、収穫量の品質の向上が期待できます。

夏剪定

夏時期の剪定は、春剪定で伸びた新芽の成長を抑制するために行われます。夏に、新芽は硬くなり、それによって剪定がより効果的になります。主な目的は、木の形を整えることです。果樹の場合は十分に日光を浴びれるように、剪定することもできます。

暑い時期に剪定を行うことは、木の負担が増えるため、1年を通して一番剪定量が少なくしなければいけない時期になります。また、夏場は病気や害虫の発生が多いため、不要枝を切ったりする風通しの良い剪定も必要になります。

秋剪定

秋時期の剪定は、夏の成長期が終わった後、木が成熟した後に行われます。この時期に剪定すると、枝が減ることにより、冬の寒さに耐える強い枝を育てることができます。

秋の剪定のは、枝の切り戻したり、木の形を整えることができ、落葉を減らすことによりお掃除の手間も省けます。

また、秋の剪定は実のつく木にとって重要な時期でもあります。剪定によって、実の生産性を高めることができます。果樹園では、秋の剪定は収穫後に行われ、翌年の収穫に備えて実のつき方を調整するために行われます。

冬剪定

冬時期の剪定は、樹形を整えたり、葉が落ちた後の休眠中の植物を健康に保つために行われます。

果樹園などでは、収穫が終わった後に行われることが多く、枝が伸び過ぎたり、病気や虫害によって枯れた枝を切り取ることが目的となります。

庭木の場合は、剪定によって樹形を変えたり、木が健康に育つように調整したりすることが目的となります。枝が枯れている場合は、枝を切り取って病気の拡大を防ぐことも重要です。また、冬季の剪定は、植物が休眠している時期であるため、剪定によるダメージを最小限に抑えることができので、1年を通して一番剪定量が多くできる時期になります。

庭木を小さくしたい時はこの時期に行う樹木が多いです。

剪定の注意点

剪定時に気を付けることは安全に行うということです。

剪定は高い所で行うことが多く、人が落下する、ハサミやノコギリが折れて飛ぶ、刃物による怪我などの危険があります。植木屋さんもヘルメットの着用、周囲の人々への注意喚起など、安全対策を行っているところが多いです。

あとは切りすぎないということがあげられます。木が弱ってしまうことがあるので気を付けましょう。

剪定の基本のまとめ

剪定は基本的に目的があって行われる。目的をしっかりと定めて、適切な時期に植物にあった剪定を行うことで健康な植物が維持される。